![关于请求谈话的中日对照研究(日文版)](https://wfqqreader-1252317822.image.myqcloud.com/cover/918/27325918/b_27325918.jpg)
2.1 依頼と依頼談話
2.1.1 依頼の定義
依頼については、多くの研究者によって定義づけや説明が行われている。ここで、いくつかの代表的な定義を概観して本研究における依頼の概念を確定する。
まず、Brown&Levinson(1987)(以下B&L)は、ポライトネス理論の鍵概念として、「フェイス」という鍵概念を提出した。すなわち、人間には、基本的な要求として、「ポジティブ·フェイス(postitive face)」と「ネガティブ·フェイス(negative face)」という2種類のフェイスがある。具体的に述べると、ポジティブ·フェイスとは、他者に理解されたい、好かれたい、賞賛されたいというプラス方向の欲求であり、ネガティブ·フェイスとは、賞賛されないまでも、少なくとも、他者に邪魔されたくない、立ち入られたくないという、マイナス方向の欲求である。人間の伝達行為には、フェイス侵害行為(face threatening act,以下FTAと略す)が含まれている。したがって、円滑なコミュニケーションを行うため、FTAの程度に応じて、①無修正、あからさまに言う、②ポジティブ·ポライとネス、③ネガティブ·ポライとネス、④オフ·レコード(言外にほのめかす)、⑤FTAをしない、という5つのポライトネス·ストラテジーの使用が求められる。また、B&Lのポライトネス理論では、依頼は相手のネガティブ·フェイスを傷つける行為の一つとして位置付けられている。しかし、笹川(1994:163-169)は日本語、中国語など5つの言語を対象として、アジア社会における依頼のポライトネスを考察し、日本社会では、依頼という行為は相手に何らかの精神的·物理的負担をかける行為であり、行為自体が相手に迷惑をかけるものと考えられるが、中国社会では、依頼は相手を喜ばせる、推奨される、相手に敬意を払う行為であると述べている。すなわち、中国社会では、「依頼」はポジティブ·フェイスに関わる行為として捉えられる可能性もある。さらに、宇佐美(2001:24)は、B&Lのポライトネス理論を高く評価しながらも、ポライトネスを「文レベル、発話行為レベルで捉えている」ことを問題点の一つとして指摘している。要するに、日中対照研究の立場に立ち、談話レベルから「依頼」を分析する本研究においては、B&Lによる「依頼」の定義が適用できない。
次に、北尾(1988)と中道·土井(1995)の「依頼」についての定義を見てみよう。北尾(1988:53)によると、依頼とは、「話し手が、聞き手に何かをするように頼むこと」であり、「それで話し手は聞き手に負担をかけ、聞き手は犠牲を払ってそれをしなければならず、多くの場合は話し手がその益を受け、聞き手は損をする」行為である。また、中道·土井(1995:84)は、依頼とは「話し手自身が利益を受けるために、強制力を伴わずに聞き手の行為を求める行為である」と述べている。
両者の定義は依頼の性質を強調し、依頼を発話内行為(illocutionary act)このような定義は発話行為レベルで依頼を研究する場合に適当だと思われるが、談話レベルで依頼を研究する場合、談話における発話の伝達性を表していない。
それに対して、高木(2003)と施(2006)は依頼の実現過程に焦点を当て、発話内行為である依頼と、その結果である発話媒介行為(perlocutionary act)まで視野に入れ、談話レベルから相次いで依頼の定義を定めた。
高木(2003)は依頼の談話において、被依頼者による待遇や配慮がどのように行われているかを、依頼者との相互行為の観点から分析するため、「丁寧さ」の原理(蒲谷他1998)を発展させ、依頼を以下のように規定した。
「依頼」:発話者が自覚的な行動展開の意図をもって、他者に対して働きかける行為である。丁寧さの原理としては、相手が行動し、相手が決定権を持ち、自分が利益を受けるという構造を持つ。
(高木2003:38)
施(2006)は、高木(2003)の定義を参照しつつ、依頼を次のように規定した。
「依頼」は、自分から自覚的な意図をもって相手の行動展開を促す「行動展開表現」の一種であり、自分の利益になることを相手の行動によって実現する行為である。
(施2006:18)
このように、施(2006)は談話レベルから、「依頼」を一発話ではなく、一連の発話の集合であると明示している。また、被依頼者の行動展開まで視野に入れ、依頼者と被依頼者の相互行為を認識している。本研究では、談話レベルから日中両言語における「依頼」を考察するため、施(2006)の主張を支持し、高木と施の定義をふまえて、「依頼」を次のように規定する。
「依頼」:自覚的な意図をもって、相手の行動展開を求める表現行為である。また、相手が行動展開の決定権を持ち、自分が相手の行動展開によって利益を受けるという特質を持つ行為である。
2.1.2 依頼談話の定義
次に、本研究の分析対象となる「依頼談話」の定義を考えてみよう。
国立国語研究所(1994)は「行為をするのがだれか、それによって利益を受けるのはだれか、相手に対して強制力があるのか」などの軸によって行為要求の談話を指示、勧め、勧誘、注文、依頼の5種類に分けた。そのうち、依頼の談話は相手の好意に期待して行為を行うよう求める談話と定義されている。しかし、この定義はあまりにも漠然としており、簡略すぎる。そこで、そもそも「談話」とは何かということについて検討しながら、「依頼」という行為の特徴と結びつけ、依頼談話の定義を考え直したい。
2.1.2.1 談話という単位
本項において、主に辞書における「談話」の定義、および「コミュニケーション」と「会話」という二つの隣接概念から「談話」の定義を検討する。
まず、辞書で談話という用語の定義を見てみよう。
“大辞林”の第2版によると、言語学用語としての「談話」とは、である。
《言》「discourse」文よりも大きい言語単位で、あるまとまりをもって展開した文の集合。話されたもの、書かれたものの両者を含む。テクスト。
この定義は一応「談話」という用語の属性および言語単位としての位置づけを提示しているが、具体的に談話という単位がどのような「まとまり」であるかを説明していない。
それでは、「コミュニケーション」という「談話」と隣接関係にある概念から、「談話」の定義を具体化しよう。コミュニケーションの概念に基づき、Schiffrin(1994)は媒体を用いた情報交換に留まらず、人間の主体性(subjectivity)への配慮を入れて、「談話」を次のように定義した。
Discourse is used for communication:people use utterances to convey information and to lead each other toward an interpretation of meanings and interactions.(談話はコミュニケーションのために行われる:人間は情報を伝え、互いに同一の意味と相互行為の解釈に導くために発話をするものである。)
(Schiffrin1994:386,橋内訳1999:30,下線は筆者による)
同じく、杉戸(1997)は「コミュニケーション」との関連性から論じて、「コミュニケーションのひとまとまり」として「談話」の定義を以下のように述べている。
コミュニケーションのひとまとまりというのは、同一の当事者によって、ある目的に関して、それが始められたところから終わるところまでだという。〈中略〉あるひとまとまりのコミュニケーションは普通、目的を持つ当事者のどちらか一方によって開始されるが、それを実現するには、コミュニケーションを行うことに対する、もう一方の合意と協力が必要となる。また、そのコミュニケーションの終了は、必ずしも目的を持つ方の意思どおりに終わることを意味しない。このようなコミュニケーションのまとまりにおいて、その主要な手段としてことばが用いられた場合、実現された結果としての言葉のつらなりにも一つのまとまりを想定することができる。それは一般に、文字によるものは「文章」、音声によるものは「談話」と呼ばれる(両者を一括して「文章」あるいは「ディスコース(discourse)」や「テクスト(text)」と言うこともある)。
(杉戸1997:15-16)
以上、「コミュニケーション」という概念をもとに、先行研究における「談話」の定義を紹介してきた。要するに、「談話」とはコミュニケーションのひとまとまりとして、ある目的の実現のために行われるものである。
一方、南(1972,1981)は日常会話の構造を捉えるための手がかりとして、「会話」と「談話」という2つの単位を規定した。音声言語最大のまとまりを「会話」、会話の一つ一つの部分を「談話」として区別した。南(1972)によれば、「会話」とは、いくつかの「談話」からなる全体的構造であり、例えば、あいさつからはじまり、その後何種類かの「談話」が続いた後、再びあいさつで終わる、ひとまとまりの言語表現全体である。一方、「会話」の中の「談話」は、個々ばらばらのものではなく、「会話」の全体的構造を形作るものであり、次の6つの基準により区分されるという。
a.その部分の前または後のはっきりしたポーズ。
b.その部分自身内部の連続性。
c.その談話(にあたる部分)に現れる各センテンス(にあたる発話)の話し手および聞き手(これを一括して談話の「参加者」と呼ぶ)が一定していること。もっとも、一部の参加者の途中からの参加、脱落はありうる。
d.その部分のcommunication上のfunctionが一定していること。たとえば、あいさつ、用談、雑談、感情の直接表現といったようなこと。
e.その部分の言葉の調子などが一定していること。たとえば、ふつうの調子、あらたまり、くだけなど。もちろん、多少の変化はありうる。
f.その部分の話題の性格が一定していること。たとえば、日常生活に関する事柄、世間話、他人のうわさなど。もちろん、多少の変化はありうる。
(南1972:110)
すなわち、南(1972,1981)は「会話」の下位概念として、「談話」を位置づけている。
2.1.2.2 本研究における依頼談話の定義
以上、「コミュニケーション」および「会話」という二つの隣接概念から、先行研究における「談話」の定義および位置づけをまとめた。
そこで、本研究では、音声言語のデータに対する分析を行うため、杉戸(1997)と南(1972,1981)の主張を支持し、一個ずつの録音の最初から最後までを「会話」と呼び、「談話」を「会話」の下位概念として考える。また、杉戸(1997)による「談話」の定義および南(1972)に挙げられた「談話」の6つの認定基準(特にb、d、f)を参考にしながら、「依頼」の特質と結びつけ、「依頼談話」を次のように定義する。
「依頼談話」:依頼という目的を持つ者とそれに対して返答する目的を持つもう一方の者が、ある依頼用件を話題に、互いに働きかけながら各自の目的の達成に向けて作り上げる一連の言語行為のまとまり。